Brave GNU World

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Georg の

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第11号

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Georg の Brave GNU World の今号へようこそ。 いつもの通り、どっちかと言うと実際的なものから始めて、 理論へとゆっくり進めていくことにしましょう。

Sawmill

Sawmill [5] は、John Harper によるウィンドウ・マネージャであり、 GNU Emacs のようなやり方で、独自のスクリプト言語によって拡張可能です。 この言語は元々 Emacs Lisp そっくりだったのですが、 今では Scheme の要素をいくらか取り入れてしまっており、 その両者の混合物となっています。

こうした拡張性にもかかわらず、速く、かつ、小さくしておくために、 背景を管理するとか「アプリケーション・ドック (application docks)」みたいな、 他のプログラムで行えるようなものを Sawmill には一切含めていません。 その唯一の目的は、 可能な中で最も優れ、最も柔軟で、 最も魅力的な方法でウィンドウを管理することです。

プログラム自体は原始的な C の中核であり、 あらゆる高度な機能はそのスクリプト言語で実装されているので、 個人的な嗜好に従って、どんな部分でも書き換えることができます。 個人的には、通常マウスのフォーカスによって決定される状況に関して、 あらゆる機能をどんなキーにでも割り当てられることが大変重要だと考えています。

もちろん、Sawmill もテーマに対応しており [6]、 いくつかのよく知られた Enlightenment のテーマの模造が現れています。 優れた GTK+ と GNOME の統合を組み合わせれば、 こうしたこと全てのおかげで Sawmill は GNOME の「事実上の」標準ウィンドウ・マネージャとなる可能性を持っています。

これだけの機能にもかかわらず、「純粋なユーザ」は恐いと感じないはずです。 というのも、 かなりの程度、 あらゆる物をグラフィカルな設定ツールの助けを借りて調整できるからです。

John Harper によると、彼の将来計画には KDE のサポートや残っているバグを取り除くことが含まれています。 彼の他の目標は、Sawmill を速くて、小さくて、そして効率的に保つために、 「機能過剰」を防ぐことです。

ちょうど始まったばかりの別のプロジェクトを続けます。

Free Unix Benchmark Project

Stefan Carstens は Free Unix Benchmark Project を開始したと教えてくれました。 現在利用可能なベンチマークは、 システムの取るに足らないサブユニットしか計量しないか、 重要な Unix 特有のタスクを無視しているか、 独占的で、それだけでは分かりやすくないかのいずれかです。 もう一つの問題はそれらはネット上全体に散在していて、 中央的なノードがないことです。

現在その目的は、単一のパッケージから全ての検査を実行することができる、 完全な「ベンチマーク・スィート (benchmark suite)」を作成することです。 TCP/IP スタックのような、 ネットワーキングの構成要素に対するベンチマークを含めることも計画されています。 そのような検査は長い間存在していないので、 そのプロジェクトがすぐにでも関心を集めるだろうことは確実です。 GNU General Public License や GNU Lesser General Public License を利用する予定なので、 ライセンスの選択も速く広まるのに一役買うことでしょう。 また、ソースが公開されるわけですから、 その検査は再現可能でわかりやすくなるわけですが、 このことはベンチマークにとって重要な特徴です。

ユーザの便宜のためにその結果は分かりやすい単位で与えられるので、 「普通の」ユーザもそれに取り組むことができます。 システムの異なる部分をプロファイルし、 「馬力」のようなものによって比較できます。 gnuplot への出力バックエンドがすでに計画されており、 きっとデータベースへの直接的な出力を実装することも問題ないだろうと思います。

もし今このプロジェクトをしきりに入手したがっていて、 今すぐにそれをインストールしたいなら、しばらく待ってもらわなければなりません。 しかしもしこの興味深いプロジェクトの一員になることに関心があるなら、 Stefan Carstens へメールを送るように勧めます [7]。 彼は参加者をとても待ちこがれていました。

これらの話題が済んだので、私個人的には幾分重要な部分に参りたいと思います。

情報的人権 - 第2部

Brave GNU World 第8号 にて「情報的人権」を公開した後、 非常にたくさんの肯定的なフィードバックを受け取りました。 私に連絡した人の一人は Ken Engel で、彼はあなたにも知ってもらいたい、 興味深い修正案を送ってくれました。

彼の最初の情報的人権に対する修正にはこう書かれています: 「リバース・エンジニア (reverse engineer) に対する自由はどうしても弱められない。」 彼の挙げた例は、 車を分解してからそれを元通りに組み立てることは完全に合法であるということで、 それを直すことさえ許されています。 同じことが独占的なソフトウェア (proprietary software) では違法であり、 そんなことをすると多額の金銭の損害をもたらしたり、 あなたが刑務所に入れられることさえあり得るのです。

二番目の拡張は、 彼が独占的な開発環境の助けを借りてアプリケーションを書かされたときに味わった経験に基いています。 その開発環境は独占的であるという事実のために、 彼のデータは今、ある曖昧なバイナリ形式に閉じ込められています。 それに対する唯一の手段は、 非常に分かりにくくて遅いグラフィカル・インターフェースだけです。 それゆえ、彼の二番目の情報的人権に対する修正案はこう述べています: 「顧客やユーザのデータはそのベンダの製品の中に閉じ込められてはならない。」

最後の項目は「組み立てライン作業者」の考え方と、 非常に頻繁に開発者たちはその仕事に最適なツールを利用することを禁じられているという事実に反対します: 「自分たちの職員の専門的技術を無視する雇い主によって、 ソフトウェアの選択を命令されてはならない。 その結果彼らの開発業務やプラットホームの選択肢を制限し、 彼らの生産性を妨害するのだから。」

きっとあなた方の多くは最低でもこれらの修正案の一つには共感するだろうと思います。

さて、私の「Systems '99」の思い出のうち、約束しておいた二番目の部分に入りたいと思います。

Sun Community Source License

私が Systems に行く一週間ぐらい前に、Star Division の創立者である Marco Boerries はあるイギリスの雑誌でインタビューを行いました。 このインタビューで、彼は GPL よりずっと優れていると思うので、 なぜ SCSL がこんなに否定的に捉えられているのか理解できないと言いました。

この陳述を立証するために、 (SCSL では) 顧客が購入するコードの所有権に関する保証を期待できるが、 GPL ではこれを与えることができない、と彼は説明しました。 従来の生産・販売事業の見地からはこれは大変標準的な陳述なのかもしれませんが、 この前後関係において、 フリーソフトウェアのビジネス・モデルに対する理解の欠如を示しています。

彼の最初の誤解は、 彼は顧客がソフトウェアを「所有物」として購入すると仮定していることです。 そのコードが盗まれたら、その顧客は自分のお金を失います。 さて、なぜフリーソフトウェアで使用するために独占的なソース・コードを盗む (フリーソフトウェアを盗むことはできません) ことが意味を為さないかの説明に突き進んでしまうと、 私がやろうとしていた問題からそれてしまいます。 だから、今はそのことを無視してしまうことにしましょう - もし興味があれば、いずれそれをやっても構いません。

今回は、 なぜソフトウェアについて語るときに「所有モデル」が意味を為さないのか、 という論点に集中したいと思います。 だけど、そうするためにはいくつかの基本原理を調査する必要があるでしょう。

従来のビジネス・モデルは、 製品を設計し、それを生産し、そしてそれを販売する、というものです。 大量生産は個人の嗜好の入り込む余地をほとんど失くしてしまいました。 さもなければ、その費用は莫大なものとなるでしょう。 このために、 大抵は現実には存在さえしない平均的な人物により良く適合するように、 製品が設計されます。 後でこの製品はみんなのために特別に生み出され、 みんなを幸せにしてくれるから購入するべきだと説得するのは販売部門の仕事です。

この「実生活」ビジネス・モデルは修正されることなくソフトウェア業界に持ち込まれました。 顧客に販売されているビットやバイトの山を生み出します - この山を所有するだけで全ての問題が片付くんだと示唆しながら。 でも、しくまれた大量生産というこの概念に対するその本当の理由は、 ソフトウェアという仮想空間には存在しません。 ソフトウェアというものは他の製品ではできないような方法で、 その顧客に合わせて仕立て直すことができます。 古い行動パターンという罠にかかって、 その必要性はずっと前に消え去ったというのに、 それらが適用されてしまっているのです。

こうした理由から、フリーソフトウェアに対するビジネス・モデルは、 解決策の所有を宣言することではなく、問題解決に全力を注ぎます。 そして、これが所有権の議論が無関係だという理由なのです。 その顧客にとってソフトウェアが自分の所有物かどうかなんて問題ではなく、 自分の問題を解決してくれることだけが重要なのです。

実際、その顧客にとって、 そのソフトウェアが誰にも所有されていないならより望ましいのです - 自分もその入手元である会社も持っていない方が。 ソフトウェアの価値はそれに注がれる保守の量によって大いに左右されます - このサービスがなかったら、ソフトウェアは急速にその利用価値を失います。 独占的なソフトウェアでは、ユーザは滅多にソフトウェア自体を購入することはなく、 ある非常に特別なバージョンを使用する権利を購入します。 しかしもちろん、このバージョンは静的なので、その利用価値は速やかに悪化します。 その顧客はすぐに別のバージョンを購入する必要に迫られます - そのユーザの必要性を助けてくれない方向に開発が進んでいてさえ。

さらに、その顧客は多少危険な依存状態に入っています。 ある特定の独占的な製品を選択することによって、 その顧客の成功はそのソフトウェアの供給業者の成功と連結されます - 多くの場合にはこれさえ明白ではありません。 顧客の成功がそのソフトウェア・ベンダに依存しないようにすることで、 フリーソフトウェアだけがその顧客に成功の安全を保証します。 その上、 そのソフトウェアを将来の必要性を満たすようにするために、 ソフトウェアの開発にいくつもの方法で影響を与えることができます。

そして次の要点に行きます。 Marco Boerries は SCSL が嫌われることの理由はそれが Sun を成功させ金持ちにするという事実だと主張しました。 これは正しくありません。 フリーソフトウェア界全体が、 大規模に GNU General Public License を使っている RedHat のような事業の財政的成功を大変嬉しく思っています。

SCSL の問題はそれ以外のどこかにあります。 ソース・コードが手元にあったとしても、 それにもかかわらず、それを変更して配布することが禁止されています。 全ての変更は Sun に送られなければならず、 これらの変更が実装されるかどうかは Sun だけが決定します。 結局全ての権利が Sun に残ったままです。 Sun がこうやってうまく作成してやろうとしたものは、 ある種の「独占的オープン・ソース・ライセンス (proprietary Open Source license)」です。 自由という、フリーソフトウェアの利用価値と成功の最も重要な理由が ユーザには与えられていません。 だから我々はその他の独占的ライセンスと同様に SCSL が嫌いなのです。

いいでしょう、これで今月もおしまいです。 いつものように、 意見や批判、質問の形でたくさんのフィードバックを受け取りたいと願っています - 周知の宛先 [1] へ電子メールによってそれらを送ってください。

訳者より

これまで日本語訳の校正を行ってくれていた M.Meiarashi さんが先月号を最後に、 校正をやめられました。 この場を借りて、長い間手伝ってくださった M.Meiarashi さんに感謝いたします。

そのため、今月から校正係がいなくなってしまいました。 非常に困っています。 もし手伝ってみたいという方がいらっしゃったら、 おくじまで御連絡を。 条件は英語と日本語が読めることと、 毎月校正に必要な程度の時間を割けることです。

情報

[1] 意見、批判や質問は Brave GNU World <column@gnu.org> まで
[2] GNU プロジェクトのホームページ http://www.gnu.org/home.ja.html
[3] Georg の Brave GNU World のホームページ http://www.gnu.org/brave-gnu-world/brave-gnu-world.ja.html
[4] 「We run GNU」イニシアティブ http://www.gnu.org/brave-gnu-world/rungnu/rungnu.ja.html
[5] Sawmill のホームページ: http://sawmill.sourceforge.net
[6] Sawmill Themes のホームページ: http://sawmill.themes.org
[7] Stefan Carstens <stefancarstens@talknet.de>


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Copyright (C) 1999 Georg C. F. Greve, German version published in the Linux-Magazin

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Last modified: Sun Jan 2 12:50:23 CET 2000 greve